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Channel: 社会不適合オヤジのブログ
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アルファロメオの登場する短編 Season5-1

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さて今年はじめての「アルファロメオの登場する短編」です。
性懲りもなくまた初めますので、どうか最後までお付き合いくださいませm(_ _)m
あ・・・・気がつけばもうSeason5です。多少は上達できたかなぁ~

題:星の降る夜だから

振り返れば長い間、一人旅ってやつをずっとしてきたように思う。
友も持たず、自分の進む道をただ、がむしゃらに探していたんだと。
きょうで終わらそう。そうだ。今は少し休みたい。


「これが、これが奴の最後の日記なのか・・・」
しっかりと日記を両の手で握っていた父は誰に問うでもなくそう呟いた。気丈なところを保とうとしていた姿は痛々しく感じられ、そしてその指は震えていた。

「そう。テツの日記はここで終わってる」
私は絞りだすように喉の奥で小さく答えたが、その声は自分の意思に依らず決別を確かめるようなキッパリとした口調で答えていた。

「どうして今まで・・ここで何を探していたっていうんだ。必要なものは十分ではなかったかもしれないけど、人に遅れを取るようなことはないくらいの生活をしていたじゃないか」

父は受け入れがたい事実をどのように理解すればいいのかと、やり場のない怒りとも悲しみともつかぬ感情を、誰かにぶつけたかったかのようだった。

弟は、そう2歳下の弟のテツとは先ほど警察署の隅にある安置所で会ってきた。
テツの目は再び開くことはないし、左の口角を少しだけ曲げて軽く嗤う生意気な顔も今では穏やかで無表情のままだった。
『こら、いつもの皮肉めいた言葉の一つも吐いてご覧なさいよ。こうやってわざわざ会いに来てやったんだから』
哲夫の姉、由依は何故か涙の出ない自分を不思議な気持ちで冷静に感じていた。
生意気で変に斜に構えた弟だったが成績だけは優秀で、それはもしかしたら自分の誇りだったのかもしれないとも思ったりしていた。



社会人になり一人暮らしを望んだテツは実家から3駅離れたターミナル駅の近くにアパートを借りていた。
姉である私が保証人になり引っ越しの手伝いもした。
地方都市とはいえ、駅から5分ほどで歩いて帰ることが出来るそのアパートはテツの給与を考えれば安くなかった。
「もう少し離れればあと5千円くらい安いアパートあるのに。こんな駅近くでなくてもいいでしょう?」
私は僅かな家財道具を黙々と片付けるテツに尋ねたが、彼は無言のままだった。
その上彼は敷地内にある駐車スペースに車を停め、休みの日には郊外へと繰り出し運転を楽しんでいた。

「そうだ、奴の車はどれだ。あのくすんだ赤い車がそうか?」
父は顔を上げ、私の方を睨んで聞いてきた。

「そうよ。テツの財産らしいものはあれだけ。あとは中古のパソコンぐらいなものね」

「そうか。その車はそのうち処分するが、取り敢えずうちの車庫にいれておこう。奴が大切にしてきたものなんだろう。この部屋の退去までにはもう少し時間があるから、荷物も手分けして運び出せばいい。」

もともと運転が好きではなかった父は60歳を契機に運転免許を返納していた。
その後実家の駐車場は植木鉢や不要な家財道具の置き場と姿を変えていたので、先ずはそちらを片付けることが先決だった。
賃貸契約書によれば、退去はその旨の届出をしてから30日分は賃借料などを払わなければならないということで、今日父は最後の賃借料を振込みに行ってきた。
父の車に比べればテツの車は小さかった。ざっと片付けた元駐車場は、暫くして乗り手のない赤い小型車の棲家へと変わった。



「・・・・なんか変な車。テツはこの車のこと何も教えてくれなかったけど、きっとあの子のことだから彼なりの理屈が合って選んだに違いないわね」

由依は玄関脇に佇む、五角形のようなカタチをした赤い車を見て呟いた。
日本の車ではないことくらいは分かったが、アルファロメオという名前も145という車名も、そしてなによりその素晴らしいドライビングプレジャーを知るのはもう少し先のことだった。

******************************************

はい、今夜はここまで。
今までとちょっと趣を変えた筋(すじ)と展開を目論んでます。
ま、リキまず参りましょう(^O^)

さて、愛する弟の死と彼の残した145は由依の生活にどのような影響をあたえるのでしょうか。

そしてその145の運命や如何に。 また明日(^.^)/~~~



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以前アップしたアルファを題材にした読み物も、ご興味あればぜひご覧くださいませ。
第一作:1話2話3話4話5話6話ネタばらし(^O^)
第二作:1話2話3話4話
第三作:1話2話3話4話5話
第四作:1話2話3話4話
第五作:1話2話3話4話5話
第六作:1話2話3話4話
第七作:1話2話3話4話5話6話
一話読み切り:ショート・ショート


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