またまた下手の横好き、「アルファロメオの登場する物語」を書いてみましょうという気になりました。
お時間あれば是非ごゆっくりしていってくださいませ~
文中の画像はイメージです。予めご了承下さい。
題:Try again, Even harder
その1.突然の出会い
「さて明日はいよいよプレゼンだ。今夜は晩飯食ったらもう一度資料に目を通しておかなきゃな」
孝弘は混雑するJRの帰宅ラッシュに揉まれながら窓の外の景色を見るとも無く見ていた。
いつもは車での移動が主だったが、今日はクライアントとの打ち合わせで駅前のパーキングに車をプールして電車で向かった帰りだった。
春先の涼しい夕暮れだったが今はひどく蒸し暑い。列車内に次の駅への到着が迫るアナウンスが響いた。
「お、もう阿佐ヶ谷か。」孝弘は先ほどようやく仕上げた資料が入ったバッグを網棚から引き寄せドアの方へと体を捻った。
と、何の前触れもなく電車は急激に減速し、動輪が線路を引っ掻いているのではないかと思うような激しい金属音がした。
あまりに咄嗟の出来事だったし、右手はつり革に捕まって履いたものの左手には今掴んだばかりのバッグがあった。
彼の体は後ろから何十人もがもたれかかっているに違いない強烈な衝撃を受け、思わず体が左回りに反転した。
その頃にはブレーキ音も消え車両は停止していたが、あまりの衝撃で床へ倒れこむ乗客も数多く居た。
緊急停止のために急ブレーキを掛けたのは理解できたが車両の中はまさに阿鼻叫喚の様を呈し、大声で痛みを訴える若者、狂ったように泣き叫ぶ小学生らしい女の子、倒れこんだままぐったりと声も出さずに横たわる初老の男性など、あまりにも非日常的な光景を孝弘は何故か現実味を感ぜずに居た。
「す、すみません。手を貸してもらえますか・・・」彼の背後から声がした。
見ると床に座り込んだ女性の姿が目に入った。
「大丈夫ですか?はい、手を出して」
「ありがとうございます。座席に座っていた方の足にぶつかってバランスが・・・」
「そんなことはどうでもいい。怪我はありませんか?」
どうやら彼女は足を捻ったらしく自力では立っていられない様子だった。
と、車内にアナウンスが入り、このアクシデントは人身事故であることが告げられた。
そして車両はこのまま阿佐ヶ谷駅には動かせないので、ここで降りて線路上を歩いてもらうことなどの説明とお願いの内容が繰り返し放送され、ドアが空いたら救急隊の支持に従って行動するようにとも付け加えられた。
「大丈夫ですか?ここで降りろって言ってますが歩けますか?」
孝弘は痛みに顔を歪めた彼女に向かって訊ねた。
「救急隊に処置してもらいましょう。骨折だったらひどいことになる」孝弘はそう言うと彼女をシートの隙間に座らせた。
「ありがとうございます。大丈夫です。ちょっとヒールが高かったもので、倒れるときに足首がねじれただけです」彼女はそう言うと頭を下げた。
結局しばらくして二人は敷き詰められた敷石に足を取られながら、JR職員に誘導され線路内を歩いていた。
孝弘は痛む足のせいで足元が覚束ないの彼女にことわりを入れて、肩を抱きながら歩いていた。
「ごめんなさい。お世話を掛けてしまって」
「いいや、こういう時はお互い様だ。私も後ろから押されて体が捻れて、窓ガラスにいやというほど額をぶつけたみたいだ。今頃になっておでこが痛いことに気がついた」
そういうと孝弘は拳を作り自分の額を軽く叩いた。
「え!大丈夫ですか。頭を強く打ったなんて心配です」
「大丈夫でしょう。これ以上此の頭は悪くならないからね」冗談めかしてそう言うと、彼女は初めて笑顔を見せた。
「父に迎えに来てもらいます。お礼もしなくてはいけないですし」ようやく駅前まで出た時、彼女はそう言うと携帯を耳に当てた。
『父?そうか実家から通っているのか。父親といっても俺と対して違いなさそうだけどな』
孝弘はそう思い、暫く彼女の次の言葉を待っていた。
「ごめんなさい。母は家にいたんですが、父は今夜は出かけていて遅くなるそうです。母は運転できないものですから私はタクシーで帰ります。今日は本当にありがとうございました」
そういうと彼女はバッグを開け名刺入れを取り出し、孝弘に一枚差し出した。
「協栄物産株式会社・・・へぇ随分大手の会社にお勤めですね」
共栄物産といえば孝弘の会社とも付き合いがある。新規事業の開発責任者でもあり、今の会社を立ち上げた5人のうちの一人でもある彼は、近年経済成長の目覚ましい東南アジアからの物産を使った飲食店をチェーン展開する企画を通したばかりだった。
「父がここの役員ですから、私の実力と言うより縁故採用でしょうけどもね」
彼女、いや名刺を見て彼女の名前が"円成寺"であることを知って孝弘は驚いていた。
「協栄物産の円成寺常務の娘さんですか?これはまた・・・」
そう言うと孝弘は今度は自分の名刺を目の前にいる「円成寺翔子」へと手渡した。
「・・・サンライズコーポレーションの中西孝弘さん、ですか?」
「円城寺さん、タクシーで帰るくらいなら私が送って行きましょう。そのビルの地下に私の車が停めてある。円城寺常務の娘さんと分かった以上、放っておいては帰れないですから」
そういうと孝弘は彼女の返事を待たずに手を引いて、横断歩道へと向かって歩き始めた。
翔子はまだ少し捻った足首に違和感を感じていたので、孝弘は不躾ながら翔子の肩を抱いて歩いていた。
『娘、というにはちょっと年が近すぎるし彼女と言うには年が離れすぎてる。こうやって宵の口に駅前を歩いているのは、傍から見たら変な目で見られるかもしれない』
エスカレーターで地下に降り駐車場に入った。
彼女の目の前にあったのは中西の風貌からは創造できない、芥子色の背の低いクーペだった。
「これ後の座席は荷物置き場だから、助手席にどうぞ」そういうとドアを開けて翔子の乗り込むのを手伝った。
「足首が痛いんじゃ此の車は乗り降りしにくいね。すまん」そういうとバッグを後席に放り込み、運転席に座った。
「さて、ナビゲーションをお願いできますか」野太い排気音をアバルトのマフラーから吐き出し、ゆっくりと地上へのスロープを上りながら孝弘は美しい横顔に問いかけた。
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さて久しぶりの「小説の・ようなもの」です。
いろいろ不手際だらけですが、まぁ大目に見てください。 また明日(^_^)/~~~
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