我ながら滑り出しはポンポンとテンポよく行けたと、自画自賛。。。
今時の若い兄妹の会話を想像しながら、今の車が売れない状況を重ねるのは、それはそれで面白い。
と、書き手であるこちら側が楽しんでるだけですので、本屋で立ち読みの感覚でどうぞ(^O^)
それでは二日目、どうぞ~
2)悩みもまた、楽しみのひとつ
オイル交換を頼みに出かけながら、大樹は自分がどうしてスパイダーを買うことになったのかを思い出していた。
それは簡単に云ってしまえば「一目惚れ」だった。町中でふと見かけた939スパイダー。
濃い目の塗色で肉厚なボディシェイプが、風の流れとともに小さなヴォルテックスとともに後方へ流れていくような、そんなエモーショナルなデザインに惹かれた。
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それまではアルファロメオという車を知ってはいたものの、イタリア車は素人には難しいような、気取ってるような、変な遠慮があって敬遠していた。
しかしそのスパイダーを見てから、大樹はなんとなく想定していた結婚や独立の為に蓄えていた預貯金をはたいてしまうことになったわけで。
自分はそれほど車マニアと言う自覚はなかったし、アルファ乗りとなった今でも全くそんな気負いは無い。
『何とかミーティング』とかオフ会とかにも興味が無いし、トヨタの大きなワンボックスとか日産GT-Rなんかも嫌いじゃない。
驚いたのは、車好きの人たちは運転するためにドライブに出かけるという事実を知った時。
さすがにこれを聞いた時には「アホか」と思った。
大樹がドライブに出かけるときには目的地があるからに他ならず、確かにスパイダーで行けばそれなりに道中楽しく過ごせることは確かだけど、目的地も無く運転そのものを楽しむなんてことは理解の外側にあるものだった。
オイル交換をしている時間を利用して、世話になってる工場の社長さんに妹のMitoを頼んでみた。ただし、やはりあの茶釜のようなカラーは特別仕様らしくて、日本ではまず入手が難しいとの事。
遙香はAT免許なので、セカンドハンドの流通量からして必然的にコンペテツィオーネのTCTにならざるを得ない。
となると外装色は赤・白・黒で内装は全て黒。
大樹は赤を薦めてみることと予算、そして例のナビの件を伝えて帰宅した。
帰宅すると丁度遙香がいたので単刀直入にボディカラーの件を伝えた。
「ま、中古だから仕方ないか。それにこの前赤のMito見たけど、ちょっと落ち着いた赤だったよ。あれなら服も悩まずに済みそうって感じ」と遙香。
「社長はダークレッドのスプリントがもしかしたら見つけられるかもって言ってたけど、あてにしないでくれとも言われたよ」と大樹はフォローした。
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「そうだお兄ちゃん、今日ね、角のコンビニで赤いMitoを見たよ。それがさ、もしかしたらそのダークレッドっていうやつかもしれない」
「何気なく覗きこんだらマニュアルじゃないから、ちょっと立ち止まって見てたんだ。そしたらオーナーさんがコンビニから出てきたもんで、ご挨拶しちゃった」
「ふ~ん。その人って30歳くらいでショートボブの人?」
「え!なんだ、知ってるの?もぅ~兄貴も隅に置けないなぁ。結構美人系だったよ」
「いや、何度か朝の通勤途中ですれ違うことがあってね。この辺りの人なんだろうな、とは思っていたけど」
「コノコノ~!運転中の脇見、いや、"じっと見運転"は危ないよ!とにかく、名前と連絡先は交換したから、後はこの遥香さんに任せなさい!いや~キューピッド役になるなんて思ってもいなかったわ♪」
相変わらず脳天気な妹の言葉に、大樹はなぜか満更悪い気がしなかったのが自分でも不思議だった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「こんにちわ。お邪魔します」
「初めまして。遙香の兄の大樹と言います。今日は無理を言って申し訳ありません。何しろ遙香のやつは小さい時から甘えん坊で・・・」
「お兄ちゃん!いいじゃないそんなこと。せっかく遙香たちのために時間作ってくださったんだから。ほら、こちらが葵(あおい)さんよ。お兄ちゃんの"じっと見"の♡」
「明るくて素敵な妹さんですね。私も随分前から知り合いのような気持ちでお話しちゃってます」
「いやはやなんとも・・・じゃぁ早速出かけましょうか」
口も回るが頭も回る、行動力のある遙香は先日コンビニで出会ったMitoに乗る女性に連絡を取り、ちゃっかりとMitoの試乗とキューピッド役の両方を企てた。
「これなら父さんや母さんも乗りやすいね。うるさくないし乗り心地もいいし」
「え?お財布を連れて行きやすいって?」
「・・どうしてそういうことを。。。私は今まじめに試乗させてもらっているんですからね!」
「いいわね。兄妹仲が良くて。私は一人っ子なもんだからこういう会話に憧れます」
(・・・ん?兄貴はマスオさんになるのか・・・)と遙香は余計なことを心配していた。
確かにMitoは快適で、心配していたTCTの操作も全く気を使わずに運転できることが、遙香と大樹を安心させた。
1.4Lとは云え過給器が付いたエンジンは1,260kgの車体には必要にして充分なパワーを発揮している。135馬力/19.4kg・mということは、かつてのジュリア2000GTVとほぼ同じスペックである。
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「悩ましいねぇ。僕のスパイダーは2.2Lの自然吸気で馬力もトルクも余裕があるけど、車重がこれより400kgも重いからなぁ。町中でキビキビ走るのにはこれのほうがいいな」
「それにお兄ちゃんのより前がよく見えるよ。視界が良いと運転していても安心感が違う」
「確かに背が低いとスパイダーは難しいかもな。葵さん、いつもお使いになっていてどうですか?」
「気軽に乗れますね。前は父親のセダンを借りていたんですが、その頃は稀にブツケたり擦ったりしちゃいました。けどMitoに乗り換えてからはありませんね。ま、自分で買ったから余計に気をつけているってことかも知れませんが」
後ろの座席の葵は、柔らかな口調と共に僅かに微笑みながら前席に座る二人につぶやいた。
大樹は心地よく聞きながら、傾いた夕陽を気にして食事を提案した。
「今日は本当に有難うございます。何かお礼をと思うのですが、このまま三人で食事でもしませんか?」
「よ!待ってました!さすがは我が兄貴、ソツがないねぇ。じゃ、二丁目のあの店にしようよ」
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葵は運転しなくてはいけないと、アルコールを控えてくれた。
大樹と遙香はシーフードレストランで有名なこの店の料理とワインを堪能しながら、今日の試乗について感想をまとめようと決まった。
アペは生牡蠣。大粒のそれが銀盆に載せられて来る。オフホワイトのむっちりとした牡蠣の身をシャブリで流しこむ、なんてことを想像してしまうと、Mitoのことなどしばし忘れてしまう。
しかし大樹は思う。まるっきり遙香のペースに巻き込まれて入るものの、Mitoって車は決して悪くない。女性に似合うとは思うけれど、男の俺が運転しても充分に楽しいし、スパイダーとは違った関わり方が出来そうだ。
「まったく悩ましいものだな。おれはそんなに車のことには興味がなかった筈なのに。遙香の我儘のおかげで葵さんに出会う事ができたのだけど、Mitoに似合うイメージは遙香じゃなくやっぱり葵さんだ」
大樹は慌ただしく動くここ一連の流れを、何故か悩ましいものと感じ始めていた。
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さて第2夜は終了。今夜もお読み頂き有難うございます。
大樹は葵さんと仲良くなれるのかなぁ・・・? そして遙香の探してるMitoは一体???
明日は急・展・開・か・も・ネ(^_-)-☆また明日(^.^)/~~~
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