さて第2話。ちょっとヨタヨタしながら書いてますが、飽きられないように頑張りま~す(^O^)
2.苦悩
麻衣は焦っていた。
初日の試験は監査論と租税法の論文形式だった。彼女は監査論については十分に調べあげ、昨年度の実施内容も調べ尽くしたという自負を持っていた。
しかし租税法については見通しが甘かった。
所得税法は一般的な法解釈で十分に理解できていると思ったものの、悩み始めると急に自信を失い始めた。
そしてマークシートのような試験形式ではなく論文形式の回答方法では自身の回答を説得力のあるものに仕上げるだけの語彙力や表現力、論文の構築力までが求められ、悩み始めてしまったためにひどく説得力の無い表現になってしまているのを忸怩たる思いのまま提出してしまったのだった。
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夕方のラッシュが始まる前の地下鉄の通路を進みながら、麻衣は不安な気持ちを吹っ切ろうとしていた。
『ダメじゃないかこんなことじゃ。今まで勉強してきたことはこのレベルで躓く訳がないはずだったでしょ。焦るなんてどうかしてる』
麻衣は帰りの電車の吊革にぶら下がりながら、憤懣やるかたない心情を抑えきれずに居た。
『明日は会計学だ。これは自信がある。頑張れ麻衣』
再び自分に激を飛ばし、麻衣は吊り革を強く握りしめた。
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「おや?今日も出撃ですか。ま、事故の無いように気を付けて行ってらっしゃい」
「あぁ。折角キャブが仕上がったんだ、このまま寝ちまうにはちょっと勿体無い」
弟から声を掛けられ、薄い裏皮のドライビング・シューズを履きながら健一はそう答えた。
何しろ半年以上も入荷待ちだったウエーバーがようやく手に入り、ウルトラクイックな吹け上がりをもつ1.7L水平対向エンジンの気持よさを再び体感できる喜びを味わいたかった。
ガレージといえば聞こえがいいが、かつて彼らの父親が使っていた車庫に屋根を掛けただけの駐車場。
そこには健一の愛車、アルファロメオ・スッドTiが停められていた。
この車はヨーロッパのWebサイトで売りに出ていたものを健一が探し当て、昨年手許にやって来たものだった。
オランダ人のオーナーとは英語を介しやりとりして交渉したが、互いの言葉を互いが読み書きできないというのはもどかしい限りで、ちょっとした誤解もあったのだが、キャブレターの不調もその一つだった。
それでも横浜で通関手続きをして実車を見ると、健一が望んでいた以上の良好な状態のスッドであることが一目で分かった。
全くオリジナルなままの車体でパーツも欠品はない。
補修跡もごく僅かでオーナーの言う「無事故」というのも、あながち嘘じゃないと確信できた。
ナンバーが付き、実際乗り出してみると唯一キャブレターの不調のみが気になる程度だった。
キャブの不調と言うよりエンジンの不調として感じたのだが、メインジェットの径が間違ったものに取り替えられていること、ニードルの先端に段が付いてしまっていること、そして何より困ったのはキャブの躯体そのものが僅かに変形していることだった。
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このウエーバー32DIRは当時はそれほど特殊なものではなかったが、35年以上も前の気化器は今ではすっかりと希少品、いや絶滅危惧種へとなってしまっていた。
健一は古くから付き合ってくれている自動車屋さんのオーナーに頼み、八方手を尽くして探してもらいデッドストックの躯体を国内で見つけてくれた。
eBayなどの手段もあったのだが、今回のオランダ人とのやりとりで己の語学力のなさに嫌気が差し(32DIRというポピュラーなキャブであったことも気を楽にさせたが)なんとか国内で調達したかった。
『この1.7Lフラット4は絶品だ。エンジンルームの全幅に余裕がなかったからかも知れないが、ボアの84ミリに対し、ストロークはなんと67.2ミリだ。このショートストロークさはV6でも用いられているけど、V型とフラットではストロークの短さのメリットはやはりボクサーエンジンに分があるんじゃないか』
ガレージから抜け出た健一は軽くアクセルを煽り、左右の安全確認をしながら通りへと合流した。
『フロントがインボードディスクっていうのもこの軽快な足回りの肝だな。ウルトラクイックなハンドリングと相俟って、イタリアンボーイズレーサーの最右翼じゃないかな』
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やや急峻な丘陵地を大規模な住宅地に開発した健一の実家のある街は、sudを走り回らせるにはうってつけだった。勿論住宅地である以上、非常識な運転は慎まなければならなかったが。
西の空を見ると、真夏の大きな太陽が丘陵地の稜線に沈み込みつつあった。
健一は視界からその真っ赤な夕日を遮ろうとサンバイザーに手を伸ばした時、ふと視界の隅に路地から出てくる人影を見つけた。
思わずアクセルを緩め、徐行しながら通り過ぎる。
『ん?この辺りでは見かけない女性だな。このクソ暑い中、きちんとスーツを着込んでいるなんて転職組か?それにしてもこんな住宅街にはリクルートスーツ姿で尋ねる先など有りはしないのになぁ・・・』
怪訝そうな顔をして通り過ぎた健一だったが、その女性は健一の車を見据えていた。
『あ!きっと昼間見かけたあの赤い車だわ!なぜこんなところでまた・・・え~と確かこの次の通りを右に曲がって3軒目だったかしら、大貫さんのお宅は』
朝方受験前に交差点で出会った車が印象深かったのか、麻衣はsudを覚えていたようだった。
しかし麻衣がここに来たのは全く別の目的、すなわち学生時代に心の師として仰いでいた大貫教授を訪ねに来たのだった。
今日の失態を顧みて、不十分な心根のまま明日、明後日の試験に臨むには麻衣の心は打ち勝てる自信がなかった。彼女は大貫教授にお会いして、今の自分の気持ちを整理して残された2日間の試験に臨もうと決意し電車を途中下車してやってきたのだった。
『あぁ、やっぱりここだった。』
厚い栗の木を用いた表札には墨痕鮮やかに「大貫弥彦」と記されていた。
しかし麻衣はこの時、弥彦の妻の名の横に「健一」とあったことに特段の意味を持ち得なかった。
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はい!第2話はここまでです。
昨夜は職場の飲み会&食事会&カラオケ(二次会)で午前様・・・
少し書き溜めておいたのをようやくアップ出来ました(^O^)
実は最近、程度の良いスッドスプリント(RHD)がイギリスでFor Saleっていうのを見つけちゃいました。
欲しいなぁ。。。。。 また明日(^_^)/~~~~
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